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2023年9月
ミクロンを追う者に近道はありません。
まずはこの冒頭で、今回の記事の要点を整理しておきましょう。CNC マシンオペレーターをあらゆる面で補助する技術は大きな進歩を遂げています。しかし、実際のところ、あなたが望む結果を得るためには、プロセスのすべてのステップを正しく行わなければなりません。
それには計画を立て、利用している設備を最高の状態にし、ミスの可能性を減らすために必要な時間を費やす必要があります。10本の超硬工具の小ロット生産で少量ずつ研削し、3本を廃棄にしてしまったら、それは収益から直接差し引かれる大切なお金です。
だからこそ、これから注意しなければならない点をいくつか挙げ、それを正しく行うために技術がどのように役立つか説明したいと思います。最初の工具から正確さが大切になります。
経験に勝るものはなし
その昔、私が初めて CNC 工具研削盤を販売したとき、手動の研削盤を使用していた多くのオペレーターは、この新しい技術に慎重でした。つまり、コンピュータ制御の CNC 研削盤への移行に対応できるかどうかに不安を感じていたのです。そこで私は、コンピュータに慣れている人が切削工具の研削方法を学ぶよりも、切削工具の形状を理解し、ソフトウェアと CNC 研削盤の使い方を学べる人の方がずっと可能性があると話してきました。
今も同じことが言えると思います。ANCA 社マシンに搭載されているあらゆる技術は、優秀なオペレーターがより効率的かつより高い精度で加工できるように開発されたものなのです。しかも、工具を失敗させる可能性を低くすることができるのです。では、その方法をご紹介しましょう。
バーチャルリハーサル
ANCA 社の
3D CIMulator ソフトウェアは、プログラムされた工具パスをマシン上で研削するのと全く同じようにシミュレートします。使いやすいインターフェイスは非常に直感的で、オペレーターは設計中の工具の正確な 3D モデルを見ることができます。画面では、サイズ、長さ、直径、フルート数などいくつかの質問が表示され、詳細を入力する前に基本的な設定を行うため、プロセスの進行は簡単です。各ステップにはヘルプページが用意されているので、誰でもすぐに使いこなすことができます。
また、研削前やマシン構成変更時に発生する衝突を自動計算することができるので、多くの作業をソフトウェアがやってくれます。CIM3D は、さらに材料除去率や工具のバランスの取り方などの計算もすることができます。ワークフローを簡単にし、時間を節約し、衝突の見逃しやミスをする可能性を減らすことができるのです。
ブランクの下準備
プロセスのすべてのステップと同様に、ブランクの準備にもこだわりが重要です。ブランクの精度が良くなければ、正確な切削工具は作れません。ブランクの段差や直径は、場合によっては数ミクロン以内という、非常に厳しい公差で研磨する必要があります。さらに、そのブランクをツールホルダーや支持具に正確にセットしなければなりません。これらのステップをすべて正確に行うことが、成功のカギとなるのです。
研磨ホイール
お使いの研磨ホイールを使う際も精度が重要です。その直径や幅、形状、スピンドルからの長さなど、すべてがぴったり正確でなければならないのです。また、研磨ホイールのコンディショニングやツルーイング、ドレッシングが正しく行われていることも大切です。
ANCA 社マシンは、マシン内部でホイールパックの自動測定と認定を行うことができます。iGrind を使えば、オペレーターは、認定サイクルを開始する前に、ホイールパックのどの面を認定するかを選択することができます。さらに、研磨ホイールをデジタイズする前に、スピンドルハウジングに取り付けた認定ブロックを使ってプローブ自体の再認定が行われます。
温度の凄まじさ
もうひとつ、考慮しなければならない要素が温度です。マシン庫の周囲温度とマシン内部のクーラント液の温度は、どちらもとても重要です。ほんのわずかな温度変化が、あなたの作業に大きな影響を与えるのです。
幸いなことに、ANCA 社では本当に役立つ技術革新を成し遂げました。モータ温度コントロール (
Motor Temperature Control/MTC) は、モータの運転効率を調整することで、作業条件に関係なく、スピンドルのモータ温度を積極的に管理・維持する特許出願中の最新技術です。この技術により、寸法安定性が向上し、マシンが必要とするウォームアップ時間が短縮されます。さらに、ANCA 社の Launch Pad ソフトウェアであれば、例えばシフト開始の 30 分前からマシンを温め、オペレーターが到着してすぐに使えるようにすることができます。
また、クーラント液がきれいな状態であることも重要です。切粉を高いレベルまで除去するクーラント濾過システムがないと、異物を含んだクーラントが部品の仕上がりや工具の表面仕上げに影響を与えるかもしれません。さらに、ドレッサーする回数が増えるので、研磨ホイールの寿命が短くなる可能性もあるのです。
教訓
すでにお話したとおり、公差が小さいほど、近道は存在しません。つまりは計画と訓練がすべてです。時間をかけて、すべての工程を正確に行うことで、結果として時間とお金の節約へと繋がるのです。「二回測って一回切る」という古いことわざがあります。すべての機械工場で教訓として壁に貼られていてもおかしくない言葉です。
17 8月 2023